トーク・トゥ・ハー

2002年 スペイン

監督 ペドロ・アルモドバル

出演 

レオノール・ワトリング

バビエル・カマラ

ダリオ・グランディネッティ

ロサリオ・フローレス

この作品ほど、評価が二転三転した作品はめずらしい。

見ているときには、看護士ベニグノ(バビエル・カマラ)の献身ぶりに
嫌悪感を抱き続けた。
昏睡状態にあるアリシア(レオノール・ワトリング)の体中を
世話をするという理由で触れて、その上人形のように化粧をしたりカットしたり。。

挿入されているサイレント映画『縮みゆく男』に対しても、
何だか嫌な感じを持った。
ラストの方で彼の死を知ったときには、安堵感を覚えてしまった。

でもよ〜く考えてみると、
愛することに対するモラルとか定義とかは、
普遍的なものでなくて、時代により個人によってさまざまに変わっていくものである。
だとすると、ベニグノの異常なまでの一途さも彼なりの愛の表現だったのかもしれない。
そう考えると、嫌悪さではなくて、いじらしささえ感じてしまう。

『縮みゆく男』を見て、
ベニグノはアリシアとひとつになりたいと願ったのであろう。
だからこそ、あのような事件を引き起こしてしまったのだろう。
そして彼女とこの世でいっしょにいられないと悟ると、
潔く死を選んでしまう。

もし自分が意識していないところで、
そこまで尽くし愛し抜いてくれる相手に出会ったら、
どうだろう?

ただベニグノの罪は、アリシアの意志を確かめなかったことにある。
4年間は尽くすだけで幸福を感じることができたのに、
耐えきれなかったのだろう。

この『トーク・トゥ・ハー』を見て、自分なりに理解することができた今なら、
『愛のコリーダ』を真っ正面から見ることができるかもしれない。
以前見たときには、嫌悪感と理解できないもどかしさのみを感じるばかりだったから。

監督のペドロ・アルモドバルは、すごい監督だと思う。
きっとベニグノの愛の形に嫌悪感を抱く観客がいることを予測して、作ったのだろう。
でもそれだけで終わりにしないで、愛とは?を考えされる契機を与えてくれているし、
ラストでアリシア(レオノール・ワトリング)とマルコ(ダリオ・グランディネッティ)が見つめ合うシーンで
ふたりの明るい未来を予測させてくれて、希望を持たせてくれる。

女闘牛士のリディア(ロサリオ・フローレス)は悲劇の最後を遂げてはいるが、
死の直前までマルコに愛されていたことと、
命をかけていた闘牛場で記憶を終わらせることが出来たことを思うと、
充実した人生だったのかもしれない。

映画は娯楽と思っていたけど、
人生を、愛をかんがえさせてくれる作品もいいですね。


ストーリー、テーマだけでなく、音楽も素晴らしい!!
哀愁さそう歌には、じ〜んと来てしまいます。

どなたかも言っていました。
この作品は、評価が分かれると。。
そう思います。
おススメしたいのは山々ですが、受け入れがたい方がいても当然だと思います。

まず見て、考えてほしい。そういう作品です。
この作品に出会えて、人生の深みを知り、成長することができたように思います。

CHINEMA REVIEW